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日常とかゲームの話とか。。。
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2024/06/22 (Sat)



カウント30、そのカウントダウンが開始されたときにMT部隊はACを一機確認する。迎撃に走るもの、部隊の本部に救援を要請するもの、多くの者が生き残るために動き出す。
心の奥ではあきらめの気持ちを感じながら…

「本部も何を考えているのか…AC二機を見るために都市を攻撃するなど…」

襲われた都市の一角にみすぼらしい姿をした男がたたずむ。そしてMT部隊の展開されているところを睨みつける。

銀色の機体が空中からMT部隊に近づきライフルを構える。そして、遠くの荒野の一角から青白い光が見えたと思った数秒後に二機のMTが爆発する。
銀色の機体が持つライフルからの銃撃、目を凝らしたとしても点にしか見えない遠い位置からの砲撃。そこから始まる戦いは、もはや戦いではなく一方的な暴力に見える。

例え方向がわかろうと反撃できる場所にはいない遠距離攻撃。
例え捉えてもそのすぐ後には横から、あるいは背後からの衝撃により物言わぬ鉄の塊とかすMT。

あるものは青白い凶弾に、あるものはライフルの弾に、またあるものはレーザーブレードにその身を消されていく。

「たかだかMTではACの相手になるはずがない。所詮は使い捨てのできる戦力と言うことか…
いや、だからこそのこの戦いか…」

男はただ見つめる。その目にACの戦闘を叩き込むために。

「30秒で撃破か…」

30機ほどいたMTはもはやいなくなり、燃え盛る塊と黒くススが広まる荒野に成り果てていた。その黒き荒野には銀色の巨人が佇む。

「しかも無傷とはな…そうでなくては今回見に来た価値はないか。」

男は望む、ただ強い者を。





メイはふとエクティルのカメラアイを襲撃された都市にむける。しかしここからは都市の全貌が見えたとしても、詳しく見ることはできないだろう。

「…何か見られている気がするのだけれど、住んでいる人がまだいるのかしら?」

この都市は一般的には準都市と呼ばれる都市である。都市と名がついてはいるがどちらかというと中継地。
都市と都市をつなぐ場所にできる小さな都市、それが準都市である。

「気にはなるけれど、そろそろ撤収したほうがいいかしらね。じゃないとフェイが…」
『メイちゃんかえろ~。そろそろ帰らないと夕飯に間に合わないよぅ~』
「はぁ…そうね。帰りましょうか。依頼はこなしたのでしょうから。」
『やった!今日は特製オムライスだって聞いてたんだよね~。楽しみだなぁ~オムライス~  じゅるり』
「ちょっと、フェイったらもう少し我慢しなさいよ。まったく、いつもいつもあなたは…」


彼女たちは帰っていく。
自分たちを見つめる男の存在に気づくことなく。



『あ…シートにつばついちゃった・・・てへっ』



......第三話へ
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フィース家は襲撃を受け滅亡するまでに多くの技術を全世界に対して公表してきた。その多くは人に恩恵を与える技術であり、以前のシルディスが扱っていたACパーツはすべてレイヴンの生存に直接かかわるフレーム系つまりコアや脚部、腕部などのパーツであった。
そしてそれが多くの企業に対しての刺激になり、30年間という短い間で技術改革がなされた理由である。

その多くの進歩があった中、それまでと同じようにパーツを大量生産し大量販売する一方でOR(Original Regulations)パーツとよばれるパーツの開発も始まっている。それぞれのレイヴンが得意とする戦法に特化したパーツを作ることでレイヴン本来の力を発揮させようとしたのである。
ただ、一つのパーツを作るのに多くの時間とお金がかかるためORパーツを持つレイヴン自体も全体の一割にも満たない。しかも、最終的に勝敗・優劣を決めるのはレイヴンの力量に比重がかかっているのはいつの時代にもかわらないことであり、例えORパーツの性能がはるかに優れていても必要だと考えない者も多い。

「さてと~。そろそろ仕事の時間ですよぅ~」

先程までは仕事の内に入らないかのような発言をする彼女、フェイは彼女専用のORパーツ VALT をもつレイヴンである。
彼女はACではもちろんだが彼女自身が狙撃に驚くほどの才能を持っている。

「…それじゃ始めますか。…メイちゃんが行くところから遠いMTでもねらいますかねぇ。」

彼女の機体、アリヴィアの背中にあるVAITの砲身が展開されると同時に、コクピットのサブディスプレイには

 System...OK...
 Conection...Exchange...
 Charge set...60%...

という文字が流れ出る。その途端、アリヴィアの機体のまわりには目視可能なほどの電流が砲身を中心に流れ始める。

  バチッ
 バシッ

「・・・・」

コクピットでは機体の表面上に流れ出した電流の音が聞こえる。そんな中、先程の陽気の塊(?)のような雰囲気からは想像できないほどの冷たい雰囲気でフェイはメインディスプレイを見ながら手を握りしめる。

『戦闘開始まで30カウント…フェイ、大丈夫?』
「…うん」
『じゃあ…カウント開始。』

メイが今回の撃破対象であるシルディス所属のMTと戦闘を開始するまでのカウントダウンがディスプレイに表れる。
フェイは軽く息を整えてグリップを握り、トリガーに指を添える。

 6...5...4...3...

カウントが3になるとともにフェイはトリガーを引き絞る。その瞬間にアリヴィアからはMTに向けて凶弾が飛んでいく。

アリヴィアとMTの間の空間を青白い光が切り裂いていく。

 2...1...0...

カウントが0になるとともにVAITの一撃がMTの一機を捉え突き刺さる。そして、まわりのMT数機に自身の鉄塊を撒き散らしながら爆散していく。

それが合図になるかのように、戦場が動き出す。

ただ生き残るために・・・




.....第二話へ



色々な技術、特に人が手に持ち扱う技術は果たしてどこまでも進歩していけるのか?
そう考えたことがあるだろうか。

例え技術が進歩しようともその技術を使用する人はそれに見合う身体能力を持てていけるとはいえない。
例えば視力。人はある程度の速度を超えると見える範囲が狭くなっていく。これは人の動体視力には限界があり、さらに言えば例え見えていてもすべてを脳が処理をすれば脳に多大な負荷がかかるために体が無意識にセーブしている。

話がそれるが走馬灯という言葉を知っているだろうか。走馬灯は人が事故にあった際に一時的に脳の処理能力のセーブをはずし、脳が過去の出来事から回避方法を見つけるために高速に昔を思い出していることから起こる現象である。
もしかするとこの現象状態であれば見れる範囲はかわらないかもしれないが…

話を戻そう。技術が進歩しても絶対に問題になることがある。特に乗り物、人の体は急激な加速をすると高い負荷がかかる。つまりは…

「くっ……いつもながらあまりなれたくない感覚ね…」

つまりはACにのるレイヴンはある種の極限状態にいつもいるのである。

メイはフェイと分かれてから一路MT部隊の展開されている場所近くの小さな丘のふもとを目指している。これは丘のふもとから一気にMTに接近、フェイからの支援の下に全撃破を予定しているからである。
予定している地点に近づくとメイは速度を徐々に落としていく。

「このあたりでいいかしらね。さて…」

呼吸を整えグリップを握る。そして通信を開きフェイに語りかける。

「戦闘開始まで30カウント…フェイ、大丈夫?」
『…うん、大丈夫。』
「じゃあ…カウント開始。」

スピーカーからもれるフェイの言葉にいつも後ろを預ける安心感を得て、メイは空中に飛び出して高速の世界に飛び立つ。

圧倒的な加速から感じる自分の体が別離するような感覚に思いをはせながら、世界は加速する。




......B-partへ


 たった・・・
 たった数年でここまで荒れはててしまった。以前ここには清々しい空気で満ちた深い森があったというのに。

そう思いながらメイはまぶたを閉じて、昔見た神々しいまでにきれいな光景を思い出す。
動物たちが生き生きとした声で鳴く音がかすかに聞こえ、緑のじゅうたんとも言えるほどの広大な木々が生える森、雲と雲の隙間から漏れる太陽という名の陽の光が照らす雨上がりの光景を・・・

 あれが今では・・・

メイはまぶたを開きコクピットのディスプレイに目を向ける。
荒れはててしまい、ここに木々があったなど思えそうにない果て無き荒野が映るディスプレーに・・・
『ディスプレーだから』という理由ではなく、ただ砂嵐が吹き荒れている荒野・・・日の光すら満足に見えぬ風景がそこにはある。たとえ砂嵐が去ろうとも、その太陽の光は陽の光といえるものではすでになく、弱者といわれる人をいたぶる灼熱の地獄が広がるだけだ。
自然の猛威は人にとって抗うことしか出来ない。ただ、その抗いさえものみ込んでしまうのが自然なのである。

今ではこのような風景が当たり前となっている。大きく発展した街の近くではない限り、ただの森さえ見当たらないことが多い。
数年だけで世界のほぼ三割の地形や環境が変わったといってもいい。

数年・・・正確には5年前になる。
企業の一つが他の三つの企業に宣戦布告したのである。それまで何があろうとも友好関係を築いていた企業が。
当時は相当混乱していたらしい。今でこそ企業内での内乱・・・しかも企業を束ねていた家族が暗殺されていたことがわかってはいるが・・・

とにかく、その5年前から世界は企業間戦争が始まってしまった。今でこそ宣戦布告した企業・・・シルディス対三企業という様相を呈しているが、始まった当時はシルディスの独壇場であった。
準備があるかどうかはそれほどまでに形勢を決めてしまうものである。それは五年たった今でも効果は続いている。それほどまでに綿密な作戦であることもあるが、何より今ですら均衡を保っている戦況がそれを物語っている。

メイが・・・いや、メイとフェイの二人が向かっている場所はそのシルディスが急襲し制圧している街である。迅速かつ一定の強さが必要な今回は、企業が二人の属するギルドに依頼をしたために二人が向かっているのである。

『メイちゃんストップっ』

メイはフェイの急な言葉にもかかわらずに、あせることも無く自身のACに制動をかける。

「レーダーに映ったの?」
『うん、ちょっとまってね。えぇっと・・・』

フェイのACである「アリヴィア」にはORパーツとして超長距離射撃武器「VALT」がある。その補助として射程距離分の高性能レーダーも付けている。如何せんアリヴィアは支援型ACとなってしまうものの、安全圏での索敵と攻撃は敵にしてみれば脅威以外の何者でもない。しかも・・・

『MTが30くらいだね。街の南側つまりこちら側に集まってるみたい。』
「まだ増援がこないとでも思っているみたいね。ならいつも通りで行きましょう。」
『わかった~。メイちゃん気をつけてね~。』
「フェイもね。じゃあまたあとで。」

しかも、アリヴィアのパートナーが高機動の近接型ACならばなおさら・・・
メイは自身のACのスピードを加速度的に上げて敵に向かっていく。
吹き荒れる砂塵の中で、一瞬ではあるが途切れた砂塵の間に現れたメイのAC「エクティル」は、太陽の光を受けて鈍く銀色に輝くのであった。





.....第一話に続く



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