フィース家は襲撃を受け滅亡するまでに多くの技術を全世界に対して公表してきた。その多くは人に恩恵を与える技術であり、以前のシルディスが扱っていたACパーツはすべてレイヴンの生存に直接かかわるフレーム系つまりコアや脚部、腕部などのパーツであった。
そしてそれが多くの企業に対しての刺激になり、30年間という短い間で技術改革がなされた理由である。
その多くの進歩があった中、それまでと同じようにパーツを大量生産し大量販売する一方でOR(Original Regulations)パーツとよばれるパーツの開発も始まっている。それぞれのレイヴンが得意とする戦法に特化したパーツを作ることでレイヴン本来の力を発揮させようとしたのである。
ただ、一つのパーツを作るのに多くの時間とお金がかかるためORパーツを持つレイヴン自体も全体の一割にも満たない。しかも、最終的に勝敗・優劣を決めるのはレイヴンの力量に比重がかかっているのはいつの時代にもかわらないことであり、例えORパーツの性能がはるかに優れていても必要だと考えない者も多い。
「さてと~。そろそろ仕事の時間ですよぅ~」
先程までは仕事の内に入らないかのような発言をする彼女、フェイは彼女専用のORパーツ VALT をもつレイヴンである。
彼女はACではもちろんだが彼女自身が狙撃に驚くほどの才能を持っている。
「…それじゃ始めますか。…メイちゃんが行くところから遠いMTでもねらいますかねぇ。」
彼女の機体、アリヴィアの背中にあるVAITの砲身が展開されると同時に、コクピットのサブディスプレイには
System...OK...
Conection...Exchange...
Charge set...60%...
という文字が流れ出る。その途端、アリヴィアの機体のまわりには目視可能なほどの電流が砲身を中心に流れ始める。
バチッ
バシッ
「・・・・」
コクピットでは機体の表面上に流れ出した電流の音が聞こえる。そんな中、先程の陽気の塊(?)のような雰囲気からは想像できないほどの冷たい雰囲気でフェイはメインディスプレイを見ながら手を握りしめる。
『戦闘開始まで30カウント…フェイ、大丈夫?』
「…うん」
『じゃあ…カウント開始。』
メイが今回の撃破対象であるシルディス所属のMTと戦闘を開始するまでのカウントダウンがディスプレイに表れる。
フェイは軽く息を整えてグリップを握り、トリガーに指を添える。
6...5...4...3...
カウントが3になるとともにフェイはトリガーを引き絞る。その瞬間にアリヴィアからはMTに向けて凶弾が飛んでいく。
アリヴィアとMTの間の空間を青白い光が切り裂いていく。
2...1...0...
カウントが0になるとともにVAITの一撃がMTの一機を捉え突き刺さる。そして、まわりのMT数機に自身の鉄塊を撒き散らしながら爆散していく。
それが合図になるかのように、戦場が動き出す。
ただ生き残るために・・・
.....第二話へ
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